弁護士法第72条と行政書士業務

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弁護士法第72条と行政書士業務


◎ 弁護士法第72条と行政書士業務 ◎
慰謝料請求手続きの代行というものは、弁護士違反にならないのか?
弁護士法第72条というものがあります。
その中で、弁護士で無い者は、紛争に介入し、交渉を代理して行なうことは出来ないと定められております。
そのため、行政書士が貸金請求や慰謝料請求の内容証明を作成して発送することは「弁護士法72条違反」の虞は無いかと問われることがあります。
しかしながら、これは明らかな間違いです。
本来、弁護士法72条の目的は、弁護士の収益確保を目的としたものでは、ありません。
弁護士法72条は、一般市民の意思や利益尊重のために定められた、実質的意義の刑法に属する条文であり、構成要件は厳格に解釈されなければなりません。
行政書士は、書類作成に関する代理権を有しているため、貸金や慰謝料の請求書を作成し、内容証明郵便で発送することが出来ます。
また、相手方が示談に応じる場合には、示談書作成のための協議と示談書の作成を業務としておこなうことも出来ます。
さらには、平成13年に成立した改正行政書士法第1条の3第2号「行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること」について、総務省の公式な有権解釈によれば、「直接契約代理を行政書士の業務として位置づけるものではないが、行政書士が業務として契約代理を行い得るとの意味を含むものであると解される。」とされております。
(総務省行政課二瓶博昭「行政書士法の一部改正について」地方自治646 号92 頁・2001 年)。
弁護士法第72条
 弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りではない。

簡単にいうと、
弁護士でない者は、報酬を得る目的で「法律事件に関する事務」を行ってはいけません。
ということです。
この点、弁護士法72条では「法律事件に関して」と定めており、弁護士の職務を定める第3条の「法律事務に関して」という文言と明らかに区別されています。
本来、権利と義務の対立・調整という意味では、すべての契約は、元々、権利や利益が対立する可能性を有しており、紛争性のない法律事務というのは存在しませんので、明確に区分けがされている、ということです。
なお、第72条本文の「法律事件」については、いわゆる「事件性不要説」「事件性必要説」とがあります。
法務省や総務省の公式見解、および、学者の通説、では、「事件性必要説」となっています。
ただし、日弁連の見解は「事件性不要説」です。

また、よく読んでいただくと分かりますが、「ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りではない。」と書かれています。

つまり、行政書士は、行政書士法という「別の法律」の定めにより、一定の書類作成に関する法律事務を取り扱うことが可能、ということです。


行政書士法第1条の2
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、 官公署に提出する書類(その作成に代えて電 磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人 の知覚によつては認識することができない方 式で作られる記録であつて、電子計算機によ る情報処理の用に供されるものをいう。以下 同じ。)を作成する場合における当該電磁的 記録を含む。以下この条及び次条において同 じ。)その他権利義務又は事実証明に関する 書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を 作成することを業とする。

2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。<

ちなみに、権利義務に関する書類の作成を業として行うことが出来るのは、弁護士行政書士のみです。

弁護士法72条規定の法律業務に関する例外とされるものには、以下のようなものがあります。

 ①債権回収業務に関する特例としての債権回収会社(サービサー)制度
 ②司法書士に対する簡易裁判所代理権付与の認定制度
 ③弁理士に対する特定侵害訴訟事件訴訟代理権の付与
 ④行政書士への権利義務と事実証明に関する文書作成代理権、聴聞代理権の付与
 ⑤特定社会保険労務士への個別紛争解決手続代理権の付与


弁護士法違反に関する主要な判例

弁護士法第72条に関する解説として必ず出てくる代表的な判例は、以下のように判示しております。

最高裁判所 昭和37年10月 4日判決

弁護士法には厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実適正な遂行のための必要な規律に服すべきものとされるなど諸般の措置が講ぜられているのであるが、世上には、このような資格もなく、なんの規律にも服しない者が、みずからの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とするような例もないではなく、これを放置するときは、当事者その他の関係人らの利益をそこね、法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ、ひいては法律秩序を害することになるので、同条(弁護士法72条)は、かかる行為を禁圧するために設けられたものと考えられるのである

上記に照らし合わせて考えると、行政書士には厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実適正な遂行のための必要な規律に服すべきものとされるなど諸般の措置が講ぜられています。
そして、行政書士という資格を有し、行政書士法の規律にも服しており、依頼者の利益のために職務を行う者である、ということです。




その他の主要な判例としては、以下のようなものがあります。


最高裁判所 昭和37年10月 4日判決

弁護士でない者が報酬を得る目的で、原判示の事情のもとで債権者から債権の取立の委任を受けて、その取立のため請求、弁済の受領、債務の免除等の諸種の行為をすることは、弁護士法第72条の、「その他一般の法律事件」に関して、「その他の法律事務」を取り扱った場合に該当する。

最高裁判所 昭和39年02月28日判決

弁護士法第七二条前段の罪は、弁護士でない者が法定の除外事由がないのに、報酬を得る目的をもつて、同条前段所定の訴訟事件等に関して、鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱うことにより成立し、業としてこれらの法律事務を取り扱うことを要しない。

最高裁判所 昭和40年10月19日判決

原判決の弁護士法第73条にいわゆる「業とする」とは、同法第72条と同じく、具体的に為された行為の多少を問わず、反覆継続の意思のもとに所定の行為をすることを云うものであるとの判断は正当である。

最高裁判所 昭和46年07月14日判決

弁護士法72条本文は、弁護士でない者が、報酬を得る目的で、業として、他人の法律事件に関して法律事務を取り扱いまたはこれらの周旋をすることを禁止する規定である。

東京地裁 平成5年4月22日判決

行政書士がその業務の範囲内としてなした相続財産、相続人の調査、相続分なきことの証明書や遺産分割協議書等の書類の作成並びに右各書類の内容に ついて他の相続人に説明することについては、行政書士法1条に規定する「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成に当たるから行政書士の業務の範囲内である。
しかし、遺産分割につき紛争が生じ争訟性を帯びてきた場合に、依頼者のために他の相続人と折衝を行ったのは、弁護士法72条1項に定める「法律事務」にあたり、非弁活動であるから、遺産分割の折衝に関する報酬請求権は認められない。

鹿児島地裁 平成17年1月13日判決

行政書士が報酬を得る目的で業として契約を締結して破産申立てに関する書類作成等の行為を行うことは,弁護士法72条に違反する行為であって,それらを目的とする契約は,それが破産手続に関するという事実のみによって無効となるのを免れない。

最高裁判所平成22年 7月20日判決

弁護士資格等がない者らが,ビルの所有者から,そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させるなどの業務を行うことを受任し,その業務を行った場合について,弁護士法72条違反の罪が成立する

行政書士業務について

士業の中で、権利義務に関する書類の作成を業として行うことが出来るのは、弁護士行政書士のみです。

一般的に、士業は特定の独占業務を付与されておりますが、行政書士は、他の法令で禁じられている業務を除き、原則として、何でも行うことが出来ます。
つまり、町医者、または便利屋のような存在であり、まさに街の法律家なのです。

行政書士業務の位置づけは、おおよそ以下のような感じです。

示談交渉は、「争訟性の有る法律事務」であり、弁護士の独占業務のため、報酬を得る目的で行う事は「非弁活動」となる。

しかし、単に意思表示を伝える手紙の一種でしかない内容証明通知書の作成、および紛争の終結を前提としている示談書の作成は、正当な行政書士業務である。
ということです。


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